東京高等裁判所 昭和24年(新を)1157号 判決 1950年7月10日
被告人
虚顕容
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役六月及び罰金五万円に処する。
但し、本裁判確定の日から参年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納することができないときは金百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
押收に係る蒸餾器具壱式焼酎約壱斗在中の壱斗容大がめ壱個、焼耐約三斗在中の参斗容大樽壱個並びに焼酎約弍斗在中の弍斗容大樽壱個の換価金合計千弍百参拾壱円(蒸餾器及び焼酎合計六斗を除く右容器の換価金百八十五円並びに焼酎合計六斗の換価金千四拾六円)はこれを没收する。
理由
前略。
控訴趣意第一点について。
押收物件を罪証に供するには、その証拠調を要するけれども、これが没收の処分を為すには、必ずしもその証拠調を為すの必要はない。従つて、原審が適式な証拠調を為さずして所論押收物件を没收していることは、洵に所論の通りであるがこれを以て直ちに違法とする所論は理由がない。然し乍ら、記録によれば、原審はその没収に止まらず進んでこれを罪証の用に供している。つまり、原判決は採用すべからざる証拠、即ち証拠調べを経ない証拠を事実認定の資料に供した、訴訟手続上の法令違反があり、この違法の事実の確定に影響を及ぼすべく、従つて、原判決に影響を及ぼすことが明白であるから原判決はこの点において既に破棄を免れない。所論は結局において理由がある。